最果ての場所へ、約束の丘へ

長いですよ。

ここは、まぁ、自分の自己満足というか、記録的に記しておこうかなと思います。

アイルランド、なぜこの国を訪れたか。

わたしは大学生の頃、アイルランドの古代民族と言われるケルト民族による「ケルト美術」という不思議で尚且つ崇高な美術に魅了されていたんです。

研究テーマにしたかったけれど、文字が頼りの歴史学において文字を持たない民族をテーマにするのは困難すぎる、ということで、はじめ、上手くいかなかったのです。

結局そこからゴーギャン研究にたどり着いたのですが、つまるところケルト美術研究は研究というところまで至りませんでした。

「そんなの無理」と言われても悔しくて「ケルト」という文字を見つけたら書物でもなんでも買い漁りました。

そんなわけで「いつか行ってみたい」という気持ちがずっとあったんです。

もう大学も卒業してから10年前後になって、その熱もそこまでホットじゃなくなってたんですけど、3年前に「100の目標を書き出す」ということをした時に、書いてたんですよね「アイルランドへ行く」って。

それが動機となって、行ってきたわけです。

というわけで、目指すは、
1.わたしを魅了した美術の最高到達点とも言える福音書『ケルズの書』が展示されている「トリニティカレッジ」
2.異界との繋がりをもつ思想から彼らは世界の最果てを目指したことから、島の西端の崖「モハーの断崖」
3.ケルトの王タラの墓(だったと思うんですが確認できる文献は実家故曖昧)、その後のアイルランドの民にとっての望郷の地「タラの丘」
の3つがメインでした。


まず目指したのはモハーの断崖。
ダブリン空港に降り立つなり高速バスに乗り換えてゴールウェーへ。

ゴールウェーの町の雰囲気も感じつつ西の断崖を目指す、という算段でした。

これですよ。

バスツアーのスケジュール的にはここで2時間の自由行動、ということですが、ほんと、2時間必要。

ずっとずっとこと断崖が続くのを端まで端までと歩き求めるんです。

この風景自体は自然の産物ではあるけれど、この幻想的な風景が身近にあれば、想像力豊かにいろいろな妖精伝説や不思議なお話が生み出されることに頷けます。

そして断崖から島側へ振り返ればこれですよ。
なんというか、もう「無」になれるみたいな感覚です。

ひたすら草を食べる動物をただただ見つめました。

そして中一日おいて、タラの丘へ。

ここは、ダブリンからそう離れていない高台の地にあるんです。

その中でもひときわこんもりと盛り上がっているところ。
広大な景色です。
タラの丘の石碑は、なんとなくシュールではあります…

そして最終日に行きました。
トリニティカレッジ。

ケルズの書は撮影不可だったし、そんなの撮っても意味ない(本はいっぱい出てる)ので撮ってませんが、
ケルズの書が展示されている、ナショナルライブラリーがこちら。
わたしはちょっと泣きました。

あの頃、自分の研究テーマは難しいと言われて挑戦もしなかったな、と。

「ケルト」と書かれたものは買い漁ったけれど、日本はケルトやアイルランド研究は進んでおらず、日本語で書かれた文献はそりゃぁ限られてますよ。

ところが、アイルランドへ降り立った瞬間、街のあちこちにケルトやアイルランドに関する書物やものに溢れている、当たり前です。

ーーーなんであの頃来なかった。

そう思います。

お金を一生懸命貯めてフランスへは行った、なのにアイルランドは無理だと思ってた、何故無理だと思ったか。

海外へ行ったことがなく、英語よりフランス語の方が得意だったんです。
「行ってみたい」ということで母とも散々喧嘩をし「海外なんて行ったこともなくて言葉もロクに分からないくせに行けるわけがない、親の心配どう思ってるの」ということで揉めに揉めた末「より得意なフランスで1ヶ月語学留学した後にフランスを旅するならOK」というところに落ち着いたのでした。(フランスにもケルトの名残りがある地域があるんです)

確かに、母の言う通り、その時はいっぱい苦労して、分からないこともいっぱい、言葉も思うように通じない、パリの街で、長距離列車の中で、タクシーで、いっぱい泣きながら精いっぱいだったのを、10年経ってできるようになった今だから「なんでやらんかった」と軽く言えるのだろうけど、

しかし、やってみたら、できることではあったんですよ。

だいたい、できないと思ってるのは自分で、やってみたら意外とできる、そんなことばっかりなんだと思います。

海外が初めてだから
英語が苦手だから
直行便がなくてなんとなく不安だから

ダメだと思い込んでた理由って、しょーもないな。



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映画監督・俳優 前田多美です。 映画に関することはもちろん、 大切にしたいお料理のこと、お気に入りの日々のことを総括したサイトです。