工藤祐次郎「リンドウ」MV プロダクションノート
2020年7月7日 工藤祐次郎さんのミニアルバム『暑中見舞い』の全国流通がスタートされた。
そのタイミングで収録曲「リンドウ」のMVも公開となった。
こちらのMVを、このたび監督させてもらったのだ。
制作期間は約1か月と短い期間だったのだが、
制作にまつわるあれこれをここにプロダクションノートとして記載しておきたい。
どんなMVを作ろうか
構成はすべて自分で作った。
どんなMVにしようか、と会話したとき工藤さんから
「どんなのができるか楽しみに待ってたい、好きに作ってください」
と言ってもらっていた。
それはそれで思いっきり的を外した場合を考えるとプレッシャーもあるが、
「楽しみにしてるから好きにして」って、なんだかわくわくする。
まるで未来に形作るプレゼントを受け取ったみたいな気分になる。
映画のとき「15分1曲の曲を作るつもりで作ってみる」と工藤さんに言ってもらってたので、
わたしも「3分で1つの映画を作るつもりで作ってみる」と決めた。
「リンドウ」の情景を想いながら繰り返し聴いていると、男女3人が出てくるように思え、
ラストシーンからまず撮りたい風景が決まっていった。
"二つ返事"のトントン拍子
映画『光をとめる』のときの工藤さん、
「リンドウ」MVのときの私、どちらも"二つ返事"だったと、工藤さんもブログに書いてくれていたのだが、
その後の、キャスト、撮影、ロゴデザインからロケ地交渉、小道具・美術含めたあらゆるMV制作の運びも驚くほどに"二つ返事"をいただけて、トントン拍子で進んでいった。
怖くなるくらいに。
そう、複数人でものづくりをするわけだから、だいたいの場合"なんか"あるんである。
でも、1ヶ月という短期間への焦りがあったはずなのに「あれ?もうこれで準備OKなんだっけ?」となるくらいに制作がスムーズに進んでいった。
天気を除けば。
梅雨だぞ
制作時期、6月。
梅雨である。
しかもよりによって、オール外ロケで構想した馬鹿者である。
だってラストシーンがどうしても撮りたかったのである。駄々っ子か。
みんながスケジュールの合う日が6月の最終土日だった。
雨天を考慮して2日間空けてもらったものの、何があるかわからない。
10日前から天気予報をずっと見ていたのだが、前後雨マークに挟まれて、
撮影第一候補日の土曜日だけが神様に守られているみたいに晴れマークだ。
しびれる感じである。
もうずっとお腹が痛かった。
撮影前夜、晴れてくれたのでロケ現場にてキャスト陣とリハーサル。
「いけそうだ」と少し安堵したのも束の間、リハ後にまた予報を見たら、
土曜日が午後から雨に変わっている。
撮影スケジュールの入り時間を前に倒して午前に勝負をかけ、撮影決行を決断した。
撮影日の朝、集まった撮影隊。
ポツポツと雨の気配を見て見ぬ振りしながらのクランクイン。
雨が降ってくる。
傘の差し合いっこをして誤魔化そうとする。
この写真は気に入ってるが、誤魔化しが効かないくらい降ってきて一時避難。
延期か?決行か?(←どっかで聞いた悩みだ)それとも雨の日設定に書き換えるか??
という葛藤と常に戦いながら、気まぐれに降ったり止んだりを繰り返す天気の下、なんとか撮影シーンを撮りきれたのである。
大変だったけど、なんとか撮り切ったんだから、結局のところ「トントン拍子だった」と言っていいんだと思う。
実はストーリーがある、名前もある
MVに描いた内容に関しては、工藤さんも「わからないままでいたい」と仰っていたので敢えて書かないけれど、一応、A4一枚分くらいのお話を書いてキャスト・スタッフには共有していた。
MVなのでセリフもないのだが、一応、キャラクターそれぞれに名前も付いていた。
画面の色はすごく意識した。
街の色と、街を画面として切り取ってそこにキャラクターが入ってきたときの色、つまり衣裳も含めた全体の色。
映画のときは色まで塗らないけれど、今回は尺も3分と短かったので、画コンテにも色を付けてみた。
何を作ろうとしているのかをみんなで共有するために動画にしたり。
ここに、空の水色か、灼熱のオレンジか、夕暮れのうす黄色が入る予定だったけれど、
(写真はロケハン時)
そこはお天気次第なもんで思うようにはいかなかったのは仕方ない。
『暑中見舞い』がどこかで鳴っているような
A4一枚に書いた物語とはまた別に、ミニアルバム『暑中見舞い』の構成というか、他の曲たちのこともどこかで聞こえてきたらいいな、と思っていた。
もちろんそんなことはMVを観る方々には届かなくてよいことなのだが、
「このシーンは多分このキャラクターの心の中に「最高の別れ!」が流れてます」とか、そういうことはキャストに伝えた。
MVの中に出てくるアイスはもちろん「ブラックモンブラン」だ。
しかしだ。
ブラックモンブランは、大雑把に言って、広島市には売ってるコンビニエンスストアが1つしかない。
したがって、制作応援で来てくれた大野さんに、
「このカット撮り終わったら次アイスのシーンだから、十日市のデイリーまで行って買ってきとってください」みたいなこともあった。
(快く走り回ってくれた大野さん、本当にありがとう!)
チームプレイは大変だけどやっぱりおもしろい
タイトルのロゴデザインをしてくれたのは、10年来のお友だちである作家の阿部龍一くんだ。
彼は東京在住なので、こちらもやりとりは全てオンラインだったけど、すごく細やかに制作のいろいろな要素を取り込んでものづくりをする人なので、私が書いたA4一枚のお話から衣裳合わせの状況など全てを共有していた。
『暑中見舞い』も、今回のお話が決まった時点で「後で音源送るね」と言ったら「もうダウンロードしました〜」みたいな感じで、即「リンドウ」だけでなく全曲を聴いてくれる、そういう人だ。
今回のロゴは「やわらかめ・シュッとしすぎない・何かザラザラした感じ」を意識して作ってくれたそうだ。
しかも7/25~ 個展が控えているめちゃくちゃ忙しい状況下で取り組んでくれた。
(先日、彼のインスタグラムに大量の個展DMを手書きしている動画(https://www.instagram.com/tv/CCLtJdxFg1o/?igshid=1w2snuno7gp1v)がアップされていて驚愕した。そう、そういう人なのだ。
お近くの方はぜひ、お立ち寄りくださいhttps://abepuici.tumblr.com/)
7月7日のMV公開から一夜明けた今日、帰宅したら、行けやしない私のところにも個展のDMが届いていた。
一緒にものづくりをすると、
一人ではたどり着けないものにどんどん変化していく。
それが愛しくてたまらない、そんな気持ちになった。
長文になりましたが、
改めまして下記、工藤祐次郎さん「リンドウ」MVです。
もうすでにたくさんの方々にご覧いただけているみたいで、とても嬉しいです。
私は、大好きな曲のMVを、大好きな人たちと制作することができて、本当に幸せ者です。
工藤さん、MV制作に関わってくれたみなさん、本当にありがとう!
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