高橋源一郎『銀河鉄道の彼方に』
「今、このタイミングで読むことができて本当によかった」
読み進めるに従って、そんな気持ちが強くなるのを感じながら読んだ。
この本、実は昨年の夏に買ったものだった。
撮ろうとしていた長編映画が流れて「暇になるから」とぶ厚めの本書を購入、
冒頭からぐいぐい吸い込まれるように読んでいたものの、
思ったよりも2019年の晩夏以降が忙しいものになってしまい読めてなかった。
コロナ禍もありやっとゆっくりと本を読む時間ができた折、
改めて読むと、
いや、去年じゃなくて、今この瞬間に読むことができて本当によかった、と。
タイトル通り、銀河鉄道の彼方へ行くことになった人の話から物語が始まる。
非日常的でありながら、
誰にも会えず、1人で淡々と生活をして「時間」という感覚がよくわからなくなっていくことが、現在の”STAY HOME"で体感している状況とシンクロしてきます。
故に、
途中、少し恐ろしいような気持ちになったりもするのだが、
その一方で「絶対に読了しなければならない、今の私は」という使命感にも似た気持ちが湧いてきた。
そして、
物語の中に「今まで」の世界と「あらゆるものが流動的、明日の自分がわからない」世界が描かれていて、本書が執筆された時、現実世界がこのように変化するとはおそらく意識されなかったであろう、いわゆる「ファンタジー」要素が、今現在、ものすごく現実に近いものとして感じられた。
今、私が実世界で体感している流動性よりも、もっと極端に描かれた流動的世界ではあるものの「本当にこんな世界になるかもしれない」などと思え、すると、実はどうでもいいことが浮き彫りになる一方、そんなときでも大切にしたいことって、きっととてもシンプルないくつかのことだったりするんだろう、とも思えた。
読み進める中で、深い深い哀しみを想い、怖くなったこともあったが、
読み終わる頃、静かにひとつぶ、涙がこぼれた。
「"あの人"と手を握りたい、しっかりとその感覚を抱きしめたい」という読了感をくれたこの一冊は、これからもずっと大切にしたい一冊として本棚にしまおうと思います。
見つけたので一応 ↓ 貼っときます。
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